①言語聴覚士って何?
②言語聴覚士を目指すか迷っているけどどんな仕事をするの?
③やりがいや取得後のメリットって何?
このような悩み・疑問をお持ちの方にお答えします。
下記にて言語聴覚士の方に記事を依頼して書いていただきました。
言語聴覚士として働いていらっしゃる方の生の声をお届けしたいと思いますので是非ご覧になってください。仕事内容、やりがい、言語聴覚士を持っていて良かった点をご紹介致します。
この度はkさんに言語聴覚士の仕事などについて書いていただきました。
目次
言語聴覚士とは?仕事内容や利点について解説
医療系国家資格と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?
ぱっと思いつくのは、医師や看護師だと思います。それ以外でも、医療系国家資格は様々ですが、リハビリテーションに関わる三大職種として「言語聴覚士」、「作業療法士」、「理学療法士」があります。
その中で、今回は「言語聴覚士」について解説したいと思います。
1.自己紹介
はじめまして!言語聴覚士のkです。
2007年に言語聴覚士の免許を取得してから、2021年の現在までに、子供から老年になった方まで、幅広い年齢の方のリハビリテーションにかかわってきました。
約13年ほどこの仕事をしており、その間には、出産、育児も経験しました。また、5回の転職も経験しています。
「言語聴覚士」という仕事は、人生のライフスタイルの変化があっても、ずっと続けていけるくらい魅力のある仕事だと思っています。
そんな「言語聴覚士」、どんな資格なんでしょうか?以下に解説していきます。
「言語聴覚士」という資格について
言語聴覚士は、「理学療法士」、「作業療法士」と並んで、リハビリテーションにかかわる医療専門職です。
英語では SpeechLanguage-Hearing Therapist 、略してSTと呼ばれます。
資格を持っている人は、8割以上が病院で、残りの1割強が教育や福祉の分野で働いており、ごく少数、自分で教室などを立ち上げて自営業を行っています。
国指定の専門学校、もしくは大学を卒業した後で、国家試験に合格すれば、資格取得となります。
国家資格としての成立は比較的最近の1997年で、2021年3月時点で有資格者は36,000人となっています。
(一般社団法人 日本言語聴覚士協会のHPを参考にしました)
仕事内容について
言語聴覚士は、「話す、聞く、食べる」のスペシャリストといわれます。
会話や食事…誰でもごく自然におこなっているこうした行動が、病気や事故、加齢、生まれつきの障害によって難しくなることがあります。そうした方を専門知識を使って支援するのが仕事です。
具体的には以下のようなことを行います。
1.検査・評価
障害を持っている方に対して、現状を把握するために、検査や評価を行います。検査は、質問紙などを使った面接や、標準化された検査バッテリー、症状観察、などを使います。
医師による診断情報や既往歴、成育歴などからも分析を行い、それぞれの患者様にあったリハビリのプログラムを考えていきます。
2.リハビリテーション、そのほか支援
機能回復のために、実際に訓練を行ったり、代替手段を考えたり、環境調整などを行います。
2-1:機能回復訓練
障害の状態に合わせた訓練を実施します。具体的に行うことは以下のようなものがあります。
・発声訓練:声が出ない、声が小さすぎて聞き取れない、長く話せない、などの症状がある方に対して行う訓練です。姿勢の調整、呼吸機能の向上訓練、口や全身運動訓練の指導を行います。
・コミュニケーション訓練:失語症や自閉症スペクトラム障害など、コミュニケーションに障害が起きている方に対して行う訓練です。言いたいことを相手にわかるように伝えたり、相手の言うことを聞いて理解する訓練を行います。
・音の聞き取り訓練:難聴の方などに対して、補聴器や人工内耳などを使っての音の聞き取り訓練を行い、調整等にも関わります。
・嚥下訓練:加齢や病気など様々な理由により、飲んだり食べたりするのが難しくなった方を対象に行います。食事の姿勢や食べ方の指導、舌や口の動かし方などを指導します。
2-2:代替手段の検討
機能回復訓練と並行して行います。
例えば、
・声が出なかったり、発音が変になってしまう患者さまに対して、50音表やパソコン操作での表出の練習をする
・物の名前が思い出せない患者さまに対して、コミュニケーションノートといわれる指差しで要求を伝えられるノートを作る
・記憶障害ある患者さまに対して、ボイスレコーダーやメモ帳の記入の練習をする
などがあります
2-3:環境調整
障害を持ったまま生活を続けていくには、環境調整が重要です。
安心・安全に生活や訓練ができるように、室内にある刺激物を減らしたり、周囲の方に何が苦手でどうすればフォローができるのかなど、対応を伝えることも行います。
3.効果判定
介入した結果、患者さまがどのようによくなったかを評価し、訓練内容を修正、変化させていきます。また、ほかの職種と連携して、様々な視点から効果判定を行うのも大事な業務の一つです。
「言語聴覚士」のやりがい
「言語聴覚士」という仕事のやりがいはたくさんあります。私が個人的にこれ!とおもっているものをお伝えします。
1.生きる喜びを取り戻すためのお手伝いができる
「話す、聞く」などのコミュニケーションによって人とつながる、食事をおいしく食べる、などは人間が生きていくうえで必須のことです。障害を負った方は、そうした根源的な欲求が満たされにくい状態になり、生きる喜びを失っていきがちです。
言語聴覚士は、そうした絶望の中にいる方たちの気持ちに寄り添い、どういうことをすればいいのか本人と周囲に働きかけて、改善を図るお手伝いをしていきます。
「生きていてもしょうがない…」と、暗く絶望的だった表情の方が、少しずつ笑顔をみせはじめ、生きる喜びを取り戻していく様子を一緒に見ることができること、それが言語聴覚士のやりがいだと感じています。
2.良くなっていく過程や変化を一緒に喜ぶことができる
1と似ているかもしれませんが…まったく声が出なかった方が「おはよう」といえるようになる、一口も食べられなかった方が食事をとれるようになっていく、など、一度失われたように見える機能の改善の瞬間に、言語聴覚士は立ち会うことができます。
そして、患者さまとともにそれを喜ぶことができます。他者と喜びを分かち合える瞬間に、やりがいを感じる言語聴覚士は多いと思います。
3.様々な年代、様々な人生経験を積んできた人と出会える
大人になると、関わる人たちが固まってきがちです。ですが、この仕事を通して出会う患者さまは、年代も人生経験も様々で「この仕事をしていなかったら、出会うことがなかっただろうな…」と思うこともたびたびでした。
大会社の社長さんや戦後を懸命に生き抜いた方、たくさんの子供を育てた方など、私が知らない世界を垣間見ることができ、そこにやりがいを感じることが多かったです。
4.専門性を発揮できる
病院で働くと特に、他職種より狭い範囲での専門性を発揮することが多いです。
狭く深くスキルを追及することが多いので「これは言語聴覚士さんに相談しないと、と思って…」と、頼りにされることも多いです。それが仕事のやりがいに繋がっていると感じています。
資格を持っていてよかったこと
やりがい、とは別に、この資格を取っておいてよかったな、と思うことを紹介します。
1.転職がしやすい
言語聴覚士は比較的新しい国家資格なので、需要と供給の観点からみると、圧倒的に需要の方が高いです。なので、「ちょっとこの職場とは合わないかも…」と思って転職を考えたときに、求人がない、ということはほとんどありません。
求人サイトでも募集は一定してありますし、周囲の人たちからも「周りに、職場変えたいとか、働いていない言語聴覚士いない?紹介してほしいんだけど」と言われたりしたことがある言語聴覚士は多いと思います。自分自身は5回職場を変わっていますが、すべて紹介でした。
2.女性が働きやすい職場が多い
言語聴覚士は病院勤務ですが、夜勤などハードな仕事はなく、規則的なリズムで仕事ができることが多いです。また、基本的に女性が多いので、結婚・出産してからも働けるようにサポートしてくれる職場が多いのも特徴です。
個人的には、男女関係なくまったく同じ仕事をするため、「女性だから~しなければ」といわれることがあまりなかったように思います。また、リハビリ職の男性は優しく、基本的にいわゆる「イクメン」が多いので未婚の女性がパートナーを探す、という意味でもおすすめできる気がします。
3.ある程度の給与がもらえる
東京や大阪など、大都市の場合はわかりませんが、私が住んでいる「働く場所は中小企業か自営業が多い地方」では、言語聴覚士としてもらえるお給料は「一般的な事務員の男性」より5万円ほど多いと思います。
就職先にもよりますが、福利厚生が充実している場所も多いですし、ボーナスが出ないということもあまり聞いたことがないので、福利厚生を含めた給与面では比較的満足度が高い方ではないかと思います。
最後に、これから言語聴覚士を目指す方へメッセージ
言語聴覚士は、一生の仕事として選ぶ価値がある、と私自身は思っています。学生のうちからとにかく勉強!となることが多いですが、様々なひとと出会い、様々な出来事を経験していく中で、自分自身も人間として成長できる機会を得ることができる貴重な仕事だと思っています。
「困っている人のために、自分のスキルを役立てて行きたい!」という想いがあるかたであれば、きっとよい言語聴覚士になれると思います。ぜひ、一緒に頑張りましょう!